革の亀裂/脱落/移植

 
 
通称、「ガラス張り」とも言われる表面がつるつるタイプの革です。キズや磨耗は厳禁の革ですが、この依頼品はなんと!亀裂が多数ありました。担当した職人も、「最初は、ダメだろうと思った」というほどです。ところがこのバッグは見事に復活しました。基調の色合いも、感触やタッチも、見違えるほど出来が良く、伊勢地方からわざわざ送っていただいたお客様から、御礼の言葉もいただき、本当に良かったです。  
 
 
この革は、薄くてデリケートなイール革(うなぎ)です。白くむき出しているのは内部の牛革。本当は、甲部の布地が破れて穴が開いたため、販売店に問い合わせられた品なのです。ブランド店本社からの依頼で、当社に到着。実は、間違ってイール革を修復してしまったミステークです。代金はいただきませんでしたが、お客様はきっと驚かれたでしょうねー。3日間もかけて仕上げたのに…あ〜なんてことだ。(ちょっと落ち込みました)  
 
革がこれだけ深く裂けた場合、真皮内部が心配です。念のため、滋養成分の補給を、3日間繰り返し行ないました。表皮の裂け方がひどく、整形の品質がやや落ちましたが、十分ご使用できる状態です。軟らかいタイプの革ですから、エスカレーターの乗り降りにはご注意ください。  
 
ソフト感が特徴の革ですが、ひっかけには非常に弱く、白い地肌が目立ってしまいます。実はこの革、修復が困難なタイプなのです。革の表面は、水もはじいて耐久性があるのですが、白い地肌部分は、液体をなんでも吸い込み、黒ずむ性質があります。つまり、最近開発された新素材の合成品です。通常では殆ど修復できない素材です。  
 
このブーツには、直径1.5ミリの浅い穴がありました。天然皮革ですから(元々動物)、製造の前から存在していた可能性があります。この穴には、革の移植を行って仕上げましたので、今後もなんら問題なくご使用になれます。しかし、「革の移植」には限度がありますので、「なんでもできる」訳ではありませんのでご相談ください。