革のキズ

 
この革は、ヨーロッパ製特有の水性仕上げ品。キズ部分は深く削れ、真皮がむき出しているため、化学治療を行い、5種類の樹脂とプロテインその他を調合して整形しました。ベースコートから感触材の調合に至るまで、すべて水性型仕上げです。  
 
「かぶせ」の内側で金具が接触して表皮を削ってしまった例です。非常に高度な技術を要する修復でした。大事なのは、耐久性と基調の透明感や感触、タッチを復元することです。価値のある逸品ですから、ご使用の際には細心の注意を!  
 
 
この革は、なめし工程で水性染色をされた素仕上げ品の一種で、キズが付きやすいのが特徴。合計約80箇所のキズがあり、特に衝撃による凹みキズは、その凹みを元に戻す作業が加えられます。キズの修復には「前処理」として、レンズを使用した細かい手作業が欠かせないのです。(塗料は一切使用していません)  
 
ご自宅の猫が、ご主人様のバッグに爪を立ててしまったそうです。ダメージ部分を拡大して診ると、非常に鋭利で深く、キズの数は数百にも及ぶ…(泣)。このような例で、カーフなどの薄くデリケートな革のタイプは致命的です。実はこれ、カーフだったため、修復は完全な状態には成りませんでした。  
 
このバッグは、「10年前に息子からのプレゼントで…」と、ご夫婦で依頼に来られました。「ずっと使って行こうと思いますので、なんとかして欲しくて…」と、愛情や思いやりを感じさせていただきました。私たちは、このようなご依頼には腕が鳴ります。とても喜んでいただき、スタッフ一同も幸せでした。また、ご相談くださいませ。  
 
「まだ、買って間もないバッグ…」。何かに引っ掛けたキズは、たった一箇所でも気になるものです。当社は、このような例では、「一部分のみ修復するサービス」を実施。その分、加工料金もお得です。どんな小さなダメージでも、ちゃんと本物を目指して仕上げます。決して、市販の塗料でごまかしたりしないのが当社の主義です。  
 
この革は、表面に顔料などの化粧は一切行っていないプュアなタイプ。弱点として、表皮を削ったり脱落させると、白い真皮がむき出して、そこから染みになり易い「浸透性」の高い革です。つまり、表皮が無い部分が、液体に触れるとすぐ、黒ずんだ状態(染み)になるため、修復作業も難航するタイプです。  
 
この鞄は、かなりしっかりした造りで、お買い得だと思います。しかし、肝心の革のことも考慮してご使用して欲しいものです。持ち手や本体の角、背面などが摩擦で痛みやすく、真皮がむき出すと、革の内部がどんどん乾燥して劣化して行きます。もし、この状態で、パテ剤を埋めて塗装すると、「革の寿命」はあっけなく終わります。(革が割れます)  
 
この革は、油分が多いなめし方で造られているため、爪などで簡単に白くキズ痕が発生します。しかし、これは本来この革の味でもあるため、私なら、「キズがたくさん有る方が格好良い」と思うのですが、日本のお客様は、これが「ダメだ」と思っているようです。皆様にちょっと一言…革を知らないのは、「その価値が分からない」ということになりますよ。  
 
このバッグの一面だけに、三日月型のキズが数箇所ありました。当社は、どんなご依頼品でも、まず「ダメージの原因」を検証しています。革製品をご使用される人には、生活パターンがあり、「無くても七癖」というように、必ず人為的な原因があります。このお客様も、ちょっと気遣いされれば、金具の衝突が防げたはずです。